国際情勢分析

まるで「海賊」…中国知財侵害の手口「進化」 進出「餌」に技術開示要求、模倣レベルも向上

 中国による知的財産侵害の手口が巧妙化の一途をたどっている。中国進出とひきかえに海外企業に技術を開示させる例が相次いで報告されているほか、模倣品の製造や流通も多様化。他国の知財を効率よく奪う手法を「進化」させている。一方で、中国企業による特許の出願件数が増えたことで、海外企業が中国内で知財訴訟に巻き込まれるケースも目立ち始めているようだ。

(外信部 板東和正)

「全て教えて」

 「技術は全てわが社に教えてください。さもないと前には進めない」

 約1年前。日本の船舶メーカーの男性役員は、中国企業の幹部から言われた一言に凍りついた。

 日本貿易振興機構(JETRO)によると、中国では、海外企業が自動車や船舶、送電網の建設といった一部の製造業などを国内で営む場合、中国側の出資が過半を占める合弁会社を設立しなければならないと定めた法令がある。

 冒頭の男性役員は、中国での現地生産を本格化するために中国政府に合弁会社設立を申請した。その後、中国の相手企業が具体的な交渉を進める段階になって、男性の会社が持つ製造などの全ての技術を開示するように求めてきたという。

 その時、男性役員の脳裏には悪夢がよぎった。過去に、別の企業にノウハウを開示した結果、情報が流出し、製造技術を競合他社に模倣された苦い経験があったからだ。だが、悩んだ末、中国企業に対する情報開示を決断した。男性役員は「流出のリスクを考えると断る手段もあったが、中国進出のプロジェクトを進めることが最優先で泣く泣くノウハウを教えるしかなかった」と振り返る。

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